産業医と労働安全衛生法とは? その歴史的背景
産業医と最近の労働行政の取組み
産業医と労働安全衛生法と安全配慮義務
産業医と衛生委員会とは?
安全/衛生委員会の構成(作り方)
産業医と企業のリスクマネジメント
労働安全衛生法とは? その歴史的背景
労働安全衛生法は、1972年に初めて制定されました。
その目的は、労働者の安全と健康の確保、および、快適職場環境の形成でした。

当時は、主に建設業や有機溶剤を扱うような危険作業が伴う業種を対象に考えられ、事業者に対して「業務に直接起因する健康障害」の防止を課した内容でした。

その結果、産業構造上の変化と作業環境管理の強化により、1980年代になると物理的な有害要因「業務に直接起因する健康障害」は減少しました。

1990年代になると、過重労働・時間外労働などの問題が浮上し「過労死」が新たな社会的問題として出現しました。日本人は仕事に生き仕事に死ぬと、 “Karousi”は世界共通語となりました。Oxford Dictionaryにも載っています。

この結果、いわゆる「業務に直接起因するとは言えないが、業務と密接な関係を有する健康障害」がクローズアップされてきました。

1990年代後半頃から労働行政の取り組みが強化され、過去10年では、ほぼ1年ごとに対策の指針が改正されています。
過重労働をクローズアップし、脳疾患・心疾患・精神的疾防止のための総合対策が整備されるようになりました。
最近の労働行政の取組み
1996年10月 「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」を策定

1999年9月 「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針について」

2000年8月 「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」

2001年4月 「労働時間の適正な把握の為に使用者が講ずべき措置に関する基準」

2001年12月 「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」

2002年2月 「過重労働による健康障害防止の為の総合対策」

2003年5月 「賃金不払い残業総合対策要領」「サービス残業解消対策指針」

2004年10月 「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」

2006年3月 「過重労働による健康障害防止のための総合対策について


最近の監督署の取締り強化・是正勧告急増の背景が見えてきませんか?
労働安全衛生法と安全配慮義務
労働安全衛生管理とは、労働安全衛生法を守ること=社員が安全で健康に働けるような会社を作ることとお考え下さい。

労働者が心も体も健康で安心して働ける職場環境を作り、更に個性や能力を発揮できるような配慮を求められています。これが企業に求められている「安全配慮義務」です。


労働衛生の三管理(①~③)+安全衛生管理体制(④)+安全衛生教育(⑤)が安全衛生の枝葉となります。⑥は特に最近の重点事項です

① 作業環境管理・・・働きやすい環境を作ること
作業環境測定/評価、作業環境の維持/改善、職場巡視/定期自主検査

② 作業管・・・理安全・快適な作業方法に工夫すること
労働衛生保護具の種類 /使用上の留意点、職業性疾病の予防

③ 健康管理・・・健康診断を前提として健康管理をすること
各種健康診断の実施、健康診断後の措置、健康の保持増進、中高年齢者等への配慮

④労働衛生管理体制・・・即座に対応できる社内の体制作りをすること
労働安全衛生管理体制の確立、(産業医/各管理者の選任、安全・衛生委員会の設置)、労働衛生管理計画/書類整備、情報の適正管理・活用

⑤ 労働衛生教育・・・健康管理に対しての知識習得・実践をさせること
各種労働衛生教育(法定/行政指導/その他)、計画及び進行

⑥ 重要事項への対応
過重労働対策、メンタルヘルス対策、復職者の支援
衛生委員会とは?
社内を安全で健康的に、そして快適に働くことができるよう、下記項目をPlan→Do→CheckするCommitteeです。
毎月委員会を開催し、議事録を作成します。議事録は社員へ開示すると共に、3年間保存することが必要です。

1.働きやすい環境を作ること
2.安全・快適な作業方法に工夫すること
3.健康診断を前提として健康管理をすること
4.即座に対応できる社内体制づくりをすること
5.健康管理に対しての知識習得・実践させること
6.重要事項への対応
産業医.com版 安全衛生委員会の作り方
 産業医は決めました。
 では、どうやって、企業内の産業保健サービス(産業医システム)をやっていくのでしょう?
 その中心になるのが、安全/衛生委員会です。
 委員会を構成するメンバーの役割と選任方法について、ややこしいことは抜きにして、産業医.comバージョンとして簡単に説明します。
 詳しいことを知りたい人は、「安全衛生規則施行令9条」で以下内容を定めていますので、そちらをお調べ下さい。

安全/衛生委員会とは?
・ 労働者50人以上の事業場では衛生委員会を設置し、毎月1回以上、衛生に関する事項の調査審議等を行わなければならない、となっています。
・ そして、議事事項で重要な物については記録(議事録)を作成し、3年間保存することになっています。
・ ちなみに、委員会の開催時間は労働時間ですので、衛生委員会が勤務時間外に行われたときは、メンバーの方はきちんと割り増し賃金を請求しましょう。


安全/衛生委員会のメンバー

事業者は以下 全てのメンバーをしますが、自らはメンバーになれません。

総括安全衛生管理者
・ 資格は必要ありませんが、実際的な責任者である労務・総務・人事部長、工場長や作業所長などが一般的です。
・ 統括安全衛生管理者は、委員会の決定事項等を会社の検討事項として、事業主に提言する役割を担います。
・ 以下人数の事業所・業種で選任が必要です。
  1.屋外産業的業種  :  常時100人以上
  2.屋内工業的業種  :  常時300人以上
  3.屋内非工業的業種 :  常時1000人以上

衛生管理者
・ 業種に関係無く、50人以上の労働者をしている事業場にて選任する必要があります。
・ 衛生管理者免許所持者等の有資格者である事が必要です。
・ 原則、専属ですが、2人以上の選任の場合には1人は衛生コンサルタントでもOKです。
・ 職務内容は、毎週1回以上の巡視と衛生、健康に係る異常を発見した場合に必要な措置を採る事などです。また、産業医との連絡役などを担うことも多く、実際の行動部隊隊長も衛生管理者であることが多いという印象です。
安全管理者
・ 総括安全衛生管理者の下、実際的な安全管理を行う有資格者です。
・ 作業場の巡視とそれに伴う具体的な措置などを行います。
・ 原則、事業場に専属の者ですが、複数の場合には1人のみは外部の労働安全コンサルタントでもOKです。
・ 危険物取り扱いなどなければ、安全管理者は不要です。
・ 以下人数の事業所・業種で選任が必要です。
  1.常時 300人以上 : 建設業、化学製造業等
  2.常時 500人以上 : 無機化学、化学肥料、貨物運送、港湾運送業
  3.常時1000人以上 : 紙、パルプ、鉄鋼、造船業
  4.常時2000人以上 : その他屋外、又は屋内工業的業種などで労災休業101人以上/3年間の事業場

衛生委員
・ 事業者が指名しますが、その半分は労働者の代表から推薦された者から選ばなければならないとなっています。つまり、衛生委員は、労使半々の人数設定が必要です。
・ 委員メンバーは社員の代表として周囲の声を収集する役割が期待されています。人選にあたっては、社内の部署を偏らないように選ぶことが大切だと思います。人事・総務・法務・広報部などより選任されることが多いですが、議事録を作成する者が多くの場合ここに含まれている印象です。
・ 月に1回産業医を顔を会わすわけですから、社内の一番ストレスの多い部署の(上の)者を選任するのも有効です。
企業のリスクマネジメント
社員が職務時間中に怪我をした場合や病気になった場合、その多くは会社/管理職の「安全配慮義務違反」であるともいえます。

会社の安全配慮義務違反探しは、いつも問題発生後、過去にさかのぼって行われ始めます。
例) ケガ・病気の原因と仕事の関連性はないか?
例) 会社はどんな対策(安全配慮義務)をしていたか?
場合によっては行政訴訟/民事訴訟へ発展する可能性もあり、慎重な対応が必要です。

最近の労災認定訴訟から・・・、
・ 労災の請求件数ばかりか、認定件数も増加しています。
・ 特に、精神疾患(メンタルヘルス)関係で著明な増加が認められています。
・ 発症から5年後の請求に対し、時効後に労災が認定されたcaseもあります。
・ また、退職後の自殺が労災として認定されたcaseもあります。

つまり、企業は、より「求められている」ということです。

このような時代の中、企業としてのリスク対策としては、
1. 労働安全衛生法の遵守は、最低限のリスク管理と心得る必要があります。
2. 健康管理規定や就業規則の整備が必要です。
3. 議事録/面談記録など、全て書面に残すことも必要です。
4. 従業員(およびご家族)の満足度を向上させる努力も必要です。

特に4については管理監督者が日々できる安全配慮です。

問題の環境・状況を放置したり、社員の不満が積み重なったりしないように配慮することも、安全配慮義務と言えます。
管理者が不満を聞き入れるだけでも、職場への不満の蓄積を低下させることがあります。
会社としてのコミットメントが有用な場合もあります。

このように考えてみると管理職の安全配慮義務というものは、経費や時間をかけたりと難しいものではなく、日々の中で、いかに部下の変化や問題点に気づいてあげられるか、そしてその問題に対して親身に対応できるかということだと気づくと思います。
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